櫻家さん、カツの下に網を敷いてください

先週秋葉原の「とんかつ丸五」で衝撃的にうまいロースカツを喰ってきたのはすでにお読みいただいたとおりです。あの芸術品とも言える特ロースかつ定食とがっぷり四つなのかということを検証すべく、仙台ナンバーワン(当社比)の店「とんかつ櫻家」に改めて行ってきました。

本日の日替わりランチの目玉は「きのこハンバーグとしそみそとんかつ」という超強力な一品で、私が相当迷ったことは読者の皆様の想像に難くないと存じますが、本日は検証の意味もあったので後ろ髪を引かれつつ、いつもの「極上ロースカツ定食」をオーダー。

相変わらずおいしい、のは言うまでもありません。本日気がついたこと。以前から櫻家のロースカツは衣がはがれやすいと感じていたのですが、その理由らしいものに思い当たりました。どうやらその原因はキャベツです。キャベツを千切りにしたあと、恐らく鮮度(というかシャキシャキ感)を維持するために水につけておくのでしょう。そのキャベツから段々と水気が染み出してくる様子。また筆者の好みで和風ドレッシングをかけて食べているため、ドレッシングも最終的に皿の底面にたまってくるわけです。結果的にそれらの水分にさらされて、衣がびしょびしょになってしまうのですね。

これは単純にカツの下に網などを敷くか、キャベツを別皿に盛るなどすれば解決する問題だと思います。ぜひ対策してほしいところ。しかし大抵満席に近い状態の店内で、忙しくカツを揚げる店主にそんな注進ができるわけでもありません。ちょっと悩みます。

それはともかく、今日は塩で食べる一切れをわざと一口では食べず、二口に分けて食べてみました。またカツと一緒に口に入れるご飯の量も意識的に少なくしてみました。う〜ん。塩で食べる櫻家のカツはしみじみとうまい。若い頃からの癖で、ついついご飯を大量に頬張ってしまうのですが、年を食ってきて、ようやくご飯とおかずの程よいバランスが解ってきたようです。人間年を取るとこういう良いこともあるんですね。

聖地は秋葉原にあり



筆者は東京秋葉原のトンカツ屋「丸五」を甚だ愛好しております。このブログのランキングでも上の中という高ランク。上の上でない理由は「しょっちゅう食べに行けないから」という理由にすらなっていないものです。この丸五、多くの愛好家のブログに登場しておりますが、そう言った文章の中でよく見かけるのが「特ロースカツ定食こそ丸五の本領」という意味の文章です。

筆者がこのランキングの対象にしているのは実は「特」が付かない方のロースカツ定食で、それは単純に価格的な問題です(だいたい1,300円前後の価格帯を中心にランキングしているのです)。とは言えこの点についてはいずれ検証しなければと思っていたのですが、折良く偶々東京に赴く用事が入りました。これはもう天の配剤。わざわざ秋葉原に立ち寄って特ロースカツ定食を食べることにしました。お店は最近改装工事を行いましたが、あの小気味よく狭かった店内は不変。安心してカウンター席に座り特ロースカツ定食を注文しました。もちろん腹具合は万全。正に餓死寸前であります。

特に混んでいるわけでもなかったのに少々待たされます。5年ぶりくらいになる店内をしばし観察。以前と変わった点は机上に梅干しだけでなくらっきょうも置かれるようになったこと。またミルに入った岩塩も置いてあります。これが記憶にありません。当然塩でも食べてみることにします。

ようやく登場。味噌汁もごはんも本当に上等。漬け物も添え物ではなくちゃんと量もたくさんあります。肝心の特ロースは?極厚。1.5cmはありそうです。それにきれいに火が通っている。キャベツにはサウザンアイランドドレッシングをかけ、トンカツには特製ソースをかけますが端の一切れだけは塩用にソースをかけずにおきます。

さて一口。ソースの酸味が非常に心地良い。肉も厚みの割りにスッとかみ切れます。ここで上等のご飯と味噌汁が最高のサポート。たまりません。でも今日はいつものように猛然と食べ進めるのではなく、色々考えながら食べます。塩で食べるのも当然おいしいのですが、肉の力量の方が勝る感じがあります。従って醤油か店の特製ソースで食べるのがベストでしょう。

ご飯を当然おかわり。この時に確信したのですが、丸五は低い温度の油で揚げているようです。その証拠に揚げたてを口に頬張ってもヤケドをするようなことはありません。厚い肉に時間をかけて火を通しているようです。なるほど、待たされるわけです。

赤出汁の味噌汁、酸味のあるフルーティーな特製ソース、おいしいご飯とぬか漬け。旨い肉と適度な粗さのパン粉。食べ終わって陶然。これはもはやすでにアートの域でしょう。例えば上等な大吟醸を飲み干した時に脳みそが思考停止するようなあの感じ。ぎりぎりまでに余計なものを削ぎ落として、あるべきものを最上に磨き上げる。この定食が2,150円(特ロースかつ1,750円、セット400円)でも決して高いとは思いません。

そして全く胃もたれしません。確かに丸五でトンカツを食べるなら「特」メニューにするべきでしょう。本ランキングも満場一致で上の上へ変更させていただきます。丸五はトンカツ愛好家にとって「聖地」と言えます。

仙台とんかつ石亭

■お店
仙台とんかつ石亭
〒981-3203仙台市泉区高森6-8-10
Tel : 022-377-1701
定休 火曜日

■前口上
サイボクゴールデンポークを使用するトンカツ屋が泉区に存在。以前から看板の文字に惹かれていたところ、ふらりと入ったらそのクオリティに驚愕。櫻屋を脅かす存在になり得るか?

■概要
対象メニュー:ロースカツ定食 1,450円

盛りつけ:網無し。キャベツに直接寄りかかって登場
キャベツ:機械調理の様子
ソース類:特製トンカツソース、塩。ドレッシングは無し
カラシ:最初から皿に盛られています
その他:ごはん、みそ汁、香の物(恐らく自家製)。ご飯のお代わり有料

■感想
最初の一口で肉質の良さを痛感。ロースカツの脂身がうまいかどうかは肉質判断の重要なポイントですが、全く問題なし。衣はどちらかと言うと粗目で、個人的にはこちらの方が好み。ヒレカツを食べた友人の様子を見ていましたが、もしかしたら箸でさっくり切り分けられるのではないかと思えるほど。

店員の対応も良く、店内の造りも程よく上品(和室に飾り照明みたいなチグハグな点はありますが、味には関係ないです)。ランチタイムにはコーヒーがサービスされます。

■評価
上の下。油切れがやや悪いです。後半衣が剥がれてしまいそうになることもあります。ただしこれは同じ肉を使っている櫻屋にも言えるので、筆者はゴールデンポークという肉の問題ではないかと思っています。繊維が繊細で油が浸透しやすいのではないか…。揚った後にある程度油を切っても後から油が染み出してくるのではないかと思います。従って石亭のトンカツはさっぱりあっさりではなく、それなりに食べごたえのあるものになっています。これは高得点。幸い揚げている植物油は良質なので問題は無いのですが、反面備え付けのソースが若干甘めなのでロースカツの場合かなり重量級の食べごたえになります。せっかくの良い肉、良い衣具合、揚げ具合が、ソースのせいで若干スポイルされていると思えます。

ランチタイムのサービスのコーヒーは、コーヒーを嗜まない筆者には全く余計。むしろお茶のお代りをいただけたほうが100倍嬉しいです。

塩で食べればまた印象が変わるかもしれません。いずれにせよ良質のトンカツで、2010年2月現在、仙台の三大トンカツ屋は櫻屋、とんかつ加茂、石亭に決定です。